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第80 回 (2014年4月号)
Rummins「ラミンズ」Roald Dahl


早川文庫『あなたに似た人』所載 田村隆一 訳

by 柴田耕太郎


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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文 法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳をとりあげ、 文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアル ド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページ程の短いものが中心だから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に市販訳との優劣を競って みてはいかがだろうか。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げ ます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)

** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)

愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
Rummins「ラミンズ」
ストーリー
ラミンズはせこい農場主。自分の干し草の山にネズミがいると言われ、その山を一度解体し別の場所に移すことにした。息子のバートが指図に従って、わら山の一束を鋸引く。するとポロリと落ちた藁の塊の断面にのぞいたものは何と…。

(原文p620―訳文p414   誤りではないが解釈が割れる箇所
‘I wouldn’t mind betting a couple of quid you’re having it off with him somewhere secret soon.’

 「きみがこいつをね、どこか秘密のところで、もうすぐ競争にだすってことに、二ポンドかけったていいぜ」

(コメント)

I wouldn’t mind doing はイディオムで「…したいのですが」。have it off with Nはイディオムで(1)「…と性交する」(2)「(犯罪)をうまくやってのける(3)盗みを働く、とありやっかい。
元訳は(2)でとっているようでそれもダメとは言わないが、粗野な農夫の会話と考えると、(1)ととってもよいのではないか。

修正訳:
「そんなに可愛がってよ、そのうちおめえ、どこかで隠れてその犬と×××でもよろしくやらかすんじゃねえか」
(原文p620―訳文p414) 形容詞
‘That hayrick of yours opposite,’ he said, searching desperately for another subject. ‘It’s full of rats.’

「あなたのとこの向いにある、あの乾燥堆ですがね」と、彼はやけくそになって、べつの話題をさがすことにした。

(コメント)

この箇所だけみるとよさそうだが、ラミンズの家の庭でのクロウドの言葉。この家の向かいに堆があるように思えてしまう。oppositeは形容詞で「反対側の」だが、<家から少し離れた通りの、クロウドの営むガソリンスタンドの向かい側>(にあるラミンズの畑の空き地)のこと。

修正訳: うちの向かいにある、(お宅の)
(原文p621―訳文p415) 代名詞
‘I reckon they’re too artful.’

ヤツらときたら、ものすごくずる賢いと、ぼく、思うんです」

(コメント)

この前に「そのねずみとりは、ねずみを捕まえなかったのかい?」
「ええ」
「なぜだ?」との掛け合いがある。
they は(1)ネズミとも(2)ネズミ取り人ともとれる。訳文の流れがおかしくなければ、どちらでもよいだろう。元訳は(2)ととっているようだが、そうすると あとのラミンズのセリフ「ねずみとりなんかにゃ、ただの一人だって、ありがとうを言うわけにはいかんよ」とつながりにくい。(1)ととるのがいいのでない か。

修正訳:
「ねずみってやつは」
(原文p621―訳文p415)  名詞
‘Nor me, Mr Rummins. All ratcatchers is slimy cunning creatures.’

「ぼくだってそうですよ、ラミンズさん。ねずみとりなんて、みんな汚らしいずるい動物ですからね」

(コメント)

All ratcatchersis で受けているのにも、粗野な農夫であることが伺われる。creatures はこの場合「人間」を指す。例: a beautiful creature (美しい女性)

修正訳:
「連中」
(原文p622―訳文p418) 意味不明
‘No one’s potting no rats alongside of me, don’t matter how good they are.’

「おれのそばにねずみなんかいないのに、撃てるわけがないじゃないか、どんな名手にしたところでだ」

(コメント)

no が二つ重なっているが、やはり粗野な農夫の物言い。Anyone is not potting a rat alongside of me. と考える(誰であれ私の側で一匹たりともねずみを撃つのをすることはなかろう⇒許さない)。don’t matter how good they are (そいつがどんなに上手くてもだ)の good は「ふさわしい」の意。

修正訳: 「誰だろうと、この俺の側でねずみを撃たせたりしてたまるものか」
(原文p622―訳文p418) 意味不明
‘Tell him to put it away,’ Rummins said, slow and hostile, ‘I don’t mind dogs nor sticks but I’ll be buggered if I’ll have rifles.

「おい、あれをしまえって、彼に言え」ラミンズは敵意をこめて、ゆっくりと言った、「クソ、なんだろうとかまわん、もしおれがライフルをもってたら、風穴をあけてくれるぞ」

(コメント)

大学受験生以下の文法力。どうせ下訳を使ったのだろうが、どんな人がやったのか。編集者も訳文を読んでおかしいと思わなかったのだろうか。ここ何か月か連載 を休んだのは、このシリーズの邦訳を見るのに嫌気がさしたからだ。私の主要職場たる産業翻訳であれば、クレーム続出で値引きか不払いを要求されるだろう。
ねずみをやっつけるには犬でも棒でも構わないが、ライフル銃弾など投入されてたまるものか、と言っているのだ。I’ll be buggered if はイディオムで「…してたまるものか」。if I’ll have rafles if 節で will が使われているのは(1)自分の確固たる意志(2)誤用、のうち(2)。(1)では論旨が矛盾する、have とすべきところを粗野な言い方で ’ll have となったと考えたい。
この have は「自分が持つ」ではなく「自分が受ける」の意。例:give a test (試験をする⇒人に受けさせる) have a test (試験を受ける)

修正訳:「なんだって構わないが、ライフルだけは許さない」
(原文p623―訳文p419) 名詞句
The alarm had been given now and the rats were coming out quicker, one or two of them every minute, fat and long-bodied, crouching close to the ground as they ran through the grass into the hedge.

おどろいたことには、ねずみはちょろちょろと、毎分二、三匹のわりあいでとびだして来た。そのふとった胴長の連中は、草をぬけて真垣のなかへ走りこもうと、地面にひくくはいつくばっている。

(コメント)

every minute は比喩的な意味で「ちょっとの間(に)」

修正訳: 間を置いて一、二匹づつ
(原文p625―訳文p422) 名詞
…I could remember the grim scowling presence of Rummins beside me, working with a desperate urgency and watching the sky and shouting at the men to hurry.

彼は無茶苦茶に精を出し、空をながめ、人夫たちに、いそげ、いそげとせっついいていた。

(コメント)

多数人夫を雇っているみたいだ。この the men はこれまでに登場してきた知り合いの連中。

修正訳: 「俺たちみんな」
(原文p628―訳文p429) 名詞
Instantly the boy seemed to freeze, staring stupidly at the newly exposed face of the rick, unable to believe or perhaps refusing to believe what this thing was that he had cut in two.

と、その瞬間、若者はまるで凍りついてしまったようだった、堆のなかから見えてきた、なまなましい、あわれな姿になった人間の顔をポカンと見つめながら。

(コメント)

the newly exposed face of the rickthe とあることから「切り取られた面」ととるべきだろう。流れからしても、具体的に言わないで「半年前消えたジミー爺さんの身体が現れたのだな」と読者に感じさせるのが小説作法というもの。

修正訳: 自分が真っ二つに切った堆の切り口に現れたものを信じられず、いや信じることを拒むように


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