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第33回 (1月上旬号)
『2009年版 通訳ガイド英語必勝攻略ゼミ』
(坂本治昭・著、同友館・刊) その①
by 柴田耕太郎
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 このところ気合が入らず、2ヶ月休載し、失礼しました。
 著者の坂本さんとは面識があり、熱誠溢れる英語教育家として尊敬申し上げている。本書の中でも有難いことに、好意的に拙著を紹介してくれている。
 大学の授業に役立てようと本書に載っている「通訳案内業試験」を自分でやって解答と照らし合わせたところ、疑問に思う箇所がいくつかでてきた。
 より良い本にしていただきたく、あえて以下、翻訳の視点から検討してゆきます。
(問題)
p196
2006年度 通訳案内士国家試験第1次試験問題

1. 以下の文章の下線部(1)、(2)を日本語に訳しなさい。
(1)
My most striking surprise was that the image of Japan as a profoundly inward place no longer applies. To someone who has lived for long periods in America and Western Europe, there is nothing particularly challenging about Japan. All the familiar landmarks of urban life are there: the same suicidal bike messengers, the same seasonal store sales, the same credit cards. To be sure, the language is tough. But in recent years, all signs in the subway and many in the streets have been printed in English as well as Japanese. (2)My next surprise discovery was the increasingly integrated immigrants, foreigners and ethnic Japanese from places like Peru and Brazil. Theres the Indian cashier in my local supermarket, always ready to help out when the hapless foreign customer’s Japanese comes up short. Theres the Filipino storeowner whose shop fits so neatly into its street in western Tokyo that it can be easily missed.
(本書に載った解答  は悪訳、■(緑色)は誤訳部分。)
1.(1)
[A] 私が一番驚いた①ことは、これまでの日本のイメージは、②深く内に篭った場所であるとされていたのが、もはや③通用しないという①ことであった。長期間、アメリカと西ヨーロッパに④居住したことのある者にとって、日本という国は、これといって⑤魅力を感じる存在では⑥ないのだ。(ア)郊外生活の慣れ親しんだ目印が、⑦日本にはある。即ち“⑧神風バイク配送便季節ごとの商店セールクレジット・カード(イ)等同じ物が
コロケーション:「ことは…ことである」式の表現は、抽象的な説明(例えば哲学など)の場合に限ったほうがよい。
語感:これでは「自閉症」とか「陰湿」を予感させてしまう。物質的なものとの対比を言っているのが分るように訳す。
コロケーション:「イメージは…通用する」とは、あまり言わない。
力点:状態動詞の現在完了形は「経験」(…したことのある)「完了」(…してきた)ともとれるが、ここは「そうした(外国で暮らしてきた)者が今日本に(戻って)来て」ととらないと、日本の過去と現在の落差に対する驚きが出ない。
語義:間違いではないが、このままでは弱い。他動詞の現在分詞形の形容詞は「人を…させる/する」が基本。この challenging は「人をやる気にさせる」→「日本に対し興味をもって取り組もうという気持ちに人(外国人)をさせる」の意味。
力点:過去と比べた現在の状態に焦点を当てている。
(ア) 勘違い:どうしてこういう訳が出たのだろう、不思議。(文明国での)「都会の暮らし」
語義:familiar も意味の広い言葉。「慣れ親しんだ」だと、もっと具体的な「グリコの看板」とか「東京タワー」といったものを思わせてしまう。「誰でも知っている」という意味を出したい。
力点:「日本《にだけ》ある」と読めてしまうが、「(物質文明に毒された国のどこにも)そして日本《にも》ある」と言っている。
訳語選択:「神風」では「日本だけのもの」と思われてしまう。地域色を消す言い方にする。
語順:読みやすさを心がける。
(イ) 指示語:「何と同じ」かが、この文では読めない。
[解答に手をいれた修正訳]
[B] 私が一番驚いたのは、きわめて内向きの国柄、というこれまでの日本のイメージがもはや当てはまらない、ということであった。長期間、アメリカと西ヨーロッパに居住してきた者にとって、日本という国は、これといって興味を掻き立てられる存在ではなくなっている都会生活特有の事物・風景が、日本にも見られる。即ち「暴走バイク配送便」「商店の季節ごとのバーゲンセール」「クレジット・カード」など、どこの国とも同じものが
 著者の坂本さんは、通訳ガイド試験の英文和訳は、文法的に正確な上に、きちんとした日本語でなければならぬ、という。
 だとすれば、この訳文はちょっと生硬というか大雑把(瞬時に概要を伝えるのを習い性とする「通訳型」の訳文と見た)。語義の選択と文の論理に気を遣うと、読者に親切な訳文に近づくだろう。
細かく言うと:
inward は、「日本は、以前そうであったのと違って、西欧諸国と何ら変るところが無い」とつづく文脈からして、ここでは「内向きの」ととるのがよいだろう。
someone は「誰か」だが、筆者(知日派外国人か在外経験長い日本の知識人)自身が含まれているように感じられる。
challenging は、勿論「挑戦的な」ではなく「人の気をそそる」の意。
all は、強調の副詞。
次の
the は、「皆さんご存知の(西欧でよく目にする)」の感じ。
urban life は当然「都会生活」、suburb とごっちゃになったか?
この there the 〜 とあることでわかるように、初出現を導く(…がある)のではなく、「そこ(日本)に」の意味。コロンは、以下詳細に述べる印。
the same 〜 が三つ並列しているが、最後に and がないので、例は三つしかないのでなく列挙未完了を示す(…など、といった感じ)。
same についた the は副詞で「それ(西欧諸国:as 以下が省略されている)と」(同じ)。
suicidal は、表の意味「自殺的な」ではなく、そこから広がった比喩的な「すさまじい」の意。
ここの三つの並列、日本語にするとクレジット・カードと他の二つが並びにくいが、英語は日本語なら異種と思われるものを平気で並べるので、仕方がない。翻訳なら思い切って説明を加えるところ。
[原文に忠実に訳すと]
[C] 私の際立った驚きは、深く内的な場所としての日本というイメージはもはや当てはまらない、ということだった。長い期間アメリカと西ヨーロッパに暮らしてきた者にとって、日本に関してとりわけ気をそそられる何物もない。都会生活がもつあのよく知られた象徴的指標がここ日本に存在する。その指標とはつまり、西欧と同じ自暴自棄的なモーレツバイク便、季節ごとに行なわれる在庫処分セール、誰もが使うクレジット・カードなどである。
[日本語らしくすれば]
[D] とにかく驚いたのは、昔の日本にあった内向きのひたむきさがもうどこにも見られないことだ。長らく欧米で暮らしてきた者であれば、現在の日本に何ら興味をそそられることはあるまい。どの国の都会でも見られるお決まりの風物だらけなのだから。我が物顔に走り回る急送便、年中行事の在庫処分セール、お気楽便利に使われるクレジット・カード、などなど。
 さて、この試験の採点官はどれをよしとするのだろう。通訳だから概要が掴めればよいというのなら[A]、それをもう少し練ったものがよいというなら[B]、英文解釈のレベルが望まれるのなら[C]、お金のとれる翻訳を求めるなら[D]、ということになろうか。採点者の視点を意識するところから、同じはずの英語が「通訳ガイドの英語」「TOEICの英語」「英検の英語」「翻訳の英語」「受験の英語」…などと分かれて来るのかもしれない。
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