アイディのホームページへようこそ! アイディについて 採用情報 サイトマップ お問い合わせ Go to English version!
HOME 翻訳 通訳 イベント・会議 A & V 人材派遣・紹介 SCHOOL 通信教育

第32回 (10月下旬号)
『大学編入・社会人入試 これが出る!問題集』(オクムラ書店)
by 柴田耕太郎
PDFデータ
1. 2008年4月上旬号
2. 2008年4月下旬号
3. 2008年5月上旬号
4. 2008年5月下旬号
5. 2008年6月上旬号
6. 2008年6月下旬号
7. 2008年7月上旬号
8. 2008年7月下旬号
9. 2008年9月上旬号
10. 2008年9月下旬号
11. 2008年10月上旬号
12. 2008年10月下旬号
13. 2008年11月上旬号
14. 2008年11月下旬号
15. 2008年12月上旬号
16. 2008年12月下旬号
17. 2009年1月上旬号
18. 2009年1月下旬号
19. 2009年2月上旬号
20. 2009年3月上下旬号
21. 2009年4月上旬号
22. 2009年4月下旬号
23. 2009年5月上旬号
24. 2009年5月下旬号
25. 2009年6月上旬号
26. 2009年6月下旬号
27. 2009年7月上旬号
28. 2009年7月下旬号
29. 2009年9月上旬号
30. 2009年9月下旬号
31. 2009年10月上旬号
32. 2009年10月下旬号
バックナンバー
1. 2008年4月上旬号
2. 2008年4月下旬号
3. 2008年5月上旬号
4. 2008年5月下旬号
5. 2008年6月上旬号
6. 2008年6月下旬号
7. 2008年7月上旬号
8. 2008年7月下旬号
9. 2008年9月上旬号
10. 2008年9月下旬号
11. 2008年10月上旬号
12. 2008年10月下旬号
13. 2008年11月上旬号
14. 2008年11月下旬号
15. 2008年12月上旬号
16. 2008年12月下旬号
17. 2009年1月上旬号
18. 2009年1月下旬号
19. 2009年2月上旬号
20. 2009年3月上下旬号
21. 2009年4月上旬号
22. 2009年4月下旬号
23. 2009年5月上旬号
24. 2009年5月下旬号
25. 2009年6月上旬号
26. 2009年6月下旬号
27. 2009年7月上旬号
28. 2009年7月下旬号
29. 2009年9月上旬号
30. 2009年9月下旬号
31. 2009年10月上旬号
前リシーズのデータ
PDFデータ
1. 2007年1月上旬号
2. 2007年1月下旬号
3. 2007年2月上旬号
4. 2007年2月下旬号
5. 2007年3月上旬号
6. 2007年3月下旬号
7. 2007年4月上旬号
8. 2007年4月下旬号
9. 2007年5月上旬号
10. 2007年5月下旬号
11. 2007年6月上旬号
12. 2007年6月下旬号
13. 2007年7月上旬号
14. 2007年7月下旬号
15. 2007年9月上旬号
16. 2007年9月下旬号
17. 2007年10月上旬号
18. 2007年10月下旬号
19. 2007年11月上旬号
20. 2007年11月下旬号
21. 2007年12月上旬号
22. 2007年12月下旬号
23. 2008年1月上旬号
24. 2008年1月下旬号
25. 2008年2月上旬号
バックナンバー
1. 2007年1月上旬号
2. 2007年1月下旬号
3. 2007年2月上旬号
4. 2007年2月下旬号
5. 2007年3月上旬号
6. 2007年3月下旬号
7. 2007年4月上旬号
8. 2007年4月下旬号
9. 2007年5月上旬号
10. 2007年5月下旬号
11. 2007年6月上旬号
12. 2007年6月下旬号
13. 2007年7月上旬号
14. 2007年7月下旬号
15. 2007年9月上旬号
16. 2007年9月下旬号
17. 2007年10月上旬号
18. 2007年10月下旬号
19. 2007年11月上旬号
20. 2007年11月下旬号
21. 2007年12月上旬号
22. 2007年12月下旬号
23. 2008年1月上旬号
24. 2008年1月下旬号
 「学歴レンダリング」が話題となるにつれ、大学編入・大学院進学希望者が増えているようだ。私が教えている某大学でも、クラスから2名、世間的にはランク・アップした別のところへ移り「先生のお陰です」などといわれた。きわめてできる学生であったわけでもないので、編入に要する実力はどれくらいなのか知りたく、上記の本を買ってきた。
 いや、問題はどれも結構むずかしい。特にブランド校のものは抽象的な文章が多く、訳文のこなれをどれぐらいにするか、悩みそう。それで、この本の監修者(進研アカデミーグラデュエート大学部 野村靖夫)も「収録されている解答は、中堅大学のレベルに合わせて作成しましたが、部分的に偏りのあるものもあることをお断わりしておきます。」と但し書きを入れている。
 だが、「偏り」が「悪訳」の範囲で済むうちはよいが、「誤訳」の領域にまで達するとなると、これは問題だ。社会学/国際文化系英語 東大2000年度の問題と解答例を見てみよう。

(問題)
Understanding the difference between appearance and reality will be furthered by a discussion of the nature of observation. There is no deep philosophy or physics required to note the obvious effects of perspective on the results of observation. Because of their different distances, a hiking companion can appear to be as tall as a mountain. But we know the mountain is much bigger.
One of the keys to recognizing a difference between appearance and reality in this case is that as you move about and change your perspective, the scenery and your friend grow and shrink and change size even with respect to each other. The observation is obviously influenced by the circumstances of the observer, and so what you see depends in part on you.
(ア)What you see is not the way things are in themselves but the way things are from your perspective. Perceptions are also episodic in the sense that your friend disappears when you look away, shows up again when you look back, and so on. But reality is not episodic in this way. (イ)People and mountains do not blink in and out of existence just as sticks do not really bend when dipped in water.
(解答 全文訳《同書巻末にあるものに、私が印をつけた。  は悪訳、■(緑色)は誤訳》)
1. 見かけと実際の相違を理解することは、観察の本質の論議によってさらにおし進められるべきである
2. 観察の結果に関する正しい見方の明らかな諸効果を書き留めることを必要とした深い哲学、深い物理学はない。
3. 異なった距離のために、ハイキングの仲間が山と同じ高さに見えることがある。
4. でも、私達は山がはるかに大きいということを知っている。
5. この場合、見かけと実際の相違の認識の手がかりの一つは、あなたが動きまわり、あなた配置を変えるにつれ、背景とあなたの友人が、大きくなったり縮んだりし、お互いについて、その大きさを変えることである
6. 観察は、観察者の事情によって明らかに影響される。だから、あなたの見ているものは、ある程度まであなた次第である。
7. (ア)あなたが見ているものは、物事がそれ自体がそうである見方ではなく、物事があなたの見方から見られる方法である。
8. あなたの友達は、あなたが追想しない時には消え去り、あなたが追想する時に現われるなどなどの意味で、知覚もまたエピソード的である。
9. しかし、現実はこの意味ではエピソード的ではない
10. (イ)棒が水の中にちょっとつけた時、実際には曲がっているのではないように、人々や山々は、現われたり消えたり明滅するわけではないのである。

[私のコメントと訂正訳]
1. discussion :「論議」では「話し合い」に力点がゆく。ここは「論議して、絞ってゆく(talk about something in order to reach a decision)」の意味→「検討」
further「さらに(遠くに、先へ)」は副詞としての意味。ここは動詞で「…を促進する」→トル
will be furthered :「おし進められるべきである」だと will は義務を示すと理解しているようだが、そういう用法はない(命令、指図で You will leave tomorrow. 明日出て行け、となることはあるが)。これは単純未来(もっというと確信的未来で、筆者が確実にそうなると思っていることを言うのに使う)。または、現在の慣習(そうなるものだ)ととってもよいだろう→「おし進められるものである」

訂正訳 見かけと実際との差異の理解は観察の本質を検討することにより促進される
2. これは典型的な悪しき直訳で、意味がわからない。強いて和文和訳すれば「観察の結果に対し正しい見方をすることで明らかに得られる諸効果を(わざわざ)書き留める必要は(浅い哲学、浅い物理学と違って?) 深い哲学、深い物理学には不要である」ということか。
There is はこれから言いたいことが出てきますよ、といった指標で、あまり意味はない。
ここは、
Any deep philosophy or physics is not required to note the obvious effects of perspective on the results of observation. さらに平叙文にして We do not require any deep philosophy or physics to note the obvious effects of perspective on the results of observation. と言い換えられる。「観察の結果に対する視座の明らかな効果を記すのに、何ら深遠な哲学も物理学も必要でない」。深遠な哲学、物理学の属性をいわんとするのでなく、観察者の位置・立場が決する影響力の説明に大げさな学問はいらない、といっているのだ。
訂正訳 観察の結果に及ぼす視座の明らかな影響を記すのに、どんな深遠な哲学であれ物理学であれ、必要とされない。
3.
訂正訳 双方の距離が離れているがゆえに、ハイキングの友が山と同じ大きさに見えることもある。
4. 「でも」は口語的→「だが」
訂正訳 だが私達は山のほうがはるかに大きいことを知っている。
5. 「あなた」は直訳的で、日本語として不自然→「自分」(三つ目の「あなた」はなくともわかるので、トル)
perspective 「配置」の訳語はあいまい。ここは a point of view 「視点、視座」の意味→「視座」
the scenery and your friend grow and shrink and change size even with respect to each other. で、 grow, shrink, change size even with respect to each other が1 and 2 and 3 の形( and の前後の各名詞を強調)で並列。even with 以下を強調(一つ一つに対してだけでなく、相互においても、の意)。元訳は1、2の結果3になる、の意味にとっていて並列の理解が正しくない。また shrink grow との対比で用いられているのだから「縮んだり」ではなく「小さくなり」としたほうがよい。
訂正訳 この場合の見かけと実際との差異を認識する手がかりのひとつは、自分が移動し視座を変えるにつれ、背景と友人とは大きくなったり、小さくなったり、その相互間でさえ大きさを変えたりすることになる、という事実である。
6. circumstances を「事情」では「精神的・物質的理由」のようにとれてしまう。ここは
perspective の言い換えだが、「事情」の要素も確かに入っていそうだ。そこで「視点」「事情」両方を包含するような訳語を選ぶ→「状況」
訂正訳 観察は明らかに観察者の状況により影響されるのであり、だから自分が眼にするものはいくぶんか自分次第で決まるということになるのである。
7. way を「方法」一辺倒の訳語にすると、意味が伝わらなくなることがある。ここもそう
→「在りよう」。前の部分
way を「見方」とした理由がわからない( you see からの連想?) が、これも「在りよう」で統一するのがよい。
訂正訳 自分の目に入るものは、そのもの本来の在りようではなく、自分の視座からみた場合のそのものの在りようなのである。
8. look away, look back を「追想する」との訳語を充てているが、素直に「目をそらす」
「振り返る」でよい。
perception は「知覚、認識、理解、眼力、鑑識、見識」などいろいろに訳せるやっかいな単語。だがこれも広い意味では observation の言い換え。observation の訳語とズレが大きく生じないような訳語を心がける→「認識」。episodic を「エピソード的」とするのは如何なものか。抽象的に転化した意味の「気まぐれな」を採りたい。
訂正訳 認識もまた、自分が眼をそらすと相手は消え、眼を戻すとまた現われるなどといった意味合いにおいて気まぐれである。
9. in this way は「この意味では」でない→「この点」
訂正訳 しかし現実にあるものはこんな風に気まぐれではない。
10.
訂正訳 棒を半分水に浸した時、実際には折れ曲がってはいないのと全く同様に、人も山も、存在が消えたり、現われたりはしないのである。
意訳---(ア)(イ)部分
自分が目にしているものは、そのもの本来の姿ではなく、自分の視点からみえる物の姿なのである。向こうに目をやったら、見えていた友人が消えた。後ろを振り返ったら再び目に入った、というのと同様、知覚も一面的なのである。だが実在というものは、こんな風に一面的ではない。水の中に半分浸しても、木の棒は実際には曲がっていないのとまさに同じく、人間も山並みも存在が消えたり生じたりのブレを生じることはないのである。
Copyright (C) 2006 ID Corporation. All Rights Reserved