アイディのホームページへようこそ! アイディについて 採用情報 サイトマップ お問い合わせ Go to English version!
HOME 翻訳 通訳 イベント・会議 A & V 人材派遣・紹介 SCHOOL 通信教育



第73 回 (2013年5月号)
Neck「首」Roald Dahl


早川文庫『あなたに似た人』所載 田村隆一 訳

by 柴田耕太郎







PDFデータ

1. 2008年4月上旬号
2. 2008年4月下旬号
3. 2008年5月上旬号
4. 2008年5月下旬号
5. 2008年6月上旬号
6. 2008年6月下旬号
7. 2008年7月上旬号
8. 2008年7月下旬号
9. 2008年9月上旬号
10. 2008年9月下旬号
11. 2008年10月上旬号
12. 2008年10月下旬号
13. 2008年11月上旬号
14. 2008年11月下旬号
15. 2008年12月上旬号
16. 2008年12月下旬号
17. 2009年1月上旬号
18. 2009年1月下旬号
19. 2009年2月上旬号
20. 2009年3月上下旬号
21. 2009年4月上旬号
22. 2009年4月下旬号
23. 2009年5月上旬号
24. 2009年5月下旬号
25. 2009年6月上旬号
26. 2009年6月下旬号
27. 2009年7月上旬号
28. 2009年7月下旬号
29. 2009年9月上旬号
30. 2009年9月下旬号
31. 2009年10月上旬号
32. 2009年10月下旬号
33. 2010年1月上旬号
34. 2010年1月下旬号
35. 2010年2月上旬号
36. 2010年2月下旬号
37. 2010年3月上旬号
38. 2010年3月下旬号
39. 2010年4月上旬号
40. 2010年4月下旬号
41. 2010年5月上旬号
42. 2010年5月下旬号
43. 2010年6月上旬号
44. 2010年6月下旬号
45. 2010年7月上旬号
46. 2010年7月下旬号
47. 2010年9月上旬号
48. 2010年9月下旬号
49. 2010年10月号
50. 2010年11月号
51. 2010年12月号
52. 2011年1月号
53. 2011年3月号
54. 2011年4月号
55. 2011年5月号
56. 2011年6月号
57. 2011年7月号
58. 2011年11月号
59. 2012年1月号
60. 2012年2月号
61. 2012年3月号
62. 2012年4月号
63. 2012年5月号
64. 2012年6月号
65. 2012年7月号
66. 2012年9月号
67. 2012年10月号
68. 2012年11月号
69. 2012年12月号
70. 2013年1月号
71. 2013年3月号
72. 2013年4月号
73. 2013年5月号

バックナンバー

1. 2008年4月上旬号
2. 2008年4月下旬号
3. 2008年5月上旬号
4. 2008年5月下旬号
5. 2008年6月上旬号
6. 2008年6月下旬号
7. 2008年7月上旬号
8. 2008年7月下旬号
9. 2008年9月上旬号
10. 2008年9月下旬号
11. 2008年10月上旬号
12. 2008年10月下旬号
13. 2008年11月上旬号
14. 2008年11月下旬号
15. 2008年12月上旬号
16. 2008年12月下旬号
17. 2009年1月上旬号
18. 2009年1月下旬号
19. 2009年2月上旬号
20. 2009年3月上下旬号
21. 2009年4月上旬号
22. 2009年4月下旬号
23. 2009年5月上旬号
24. 2009年5月下旬号
25. 2009年6月上旬号
26. 2009年6月下旬号
27. 2009年7月上旬号
28. 2009年7月下旬号
29. 2009年9月上旬号
30. 2009年9月下旬号
31. 2009年10月上旬号
32. 2009年10月下旬号
33. 2010年1月上旬号
34. 2010年1月下旬号
35. 2010年2月上旬号
36. 2010年2月下旬号
37. 2010年3月上旬号
38. 2010年3月下旬号
39. 2010年4月上旬号
40. 2010年4月下旬号
41. 2010年5月上旬号
42. 2010年5月下旬号
43. 2010年6月上旬号
44. 2010年6月下旬号
45. 2010年7月上旬号
46. 2010年7月下旬号
47. 2010年9月上旬号
48. 2010年9月下旬号
49. 2010年10月号
50. 2010年11月号
51. 2010年12月号
52. 2011年1月号
53. 2011年3月号
54. 2011年4月号
55. 2011年5月号
56. 2011年6月号
57. 2011年7月号
58. 2011年11月号
59. 2012年1月号
60. 2012年2月号
61. 2012年3月号
62. 2012年4月号
63. 2012年5月号
64. 2012年6月号
65. 2012年7月号
66. 2012年9月号
67. 2012年10月号
68. 2012年11月号
69. 2012年12月号
70. 2013年1月号
71. 2013年3月号
72. 2013年4月号
前リシーズのデータ
PDFデータ
1. 2007年1月上旬号
2. 2007年1月下旬号
3. 2007年2月上旬号
4. 2007年2月下旬号
5. 2007年3月上旬号
6. 2007年3月下旬号
7. 2007年4月上旬号
8. 2007年4月下旬号
9. 2007年5月上旬号
10. 2007年5月下旬号
11. 2007年6月上旬号
12. 2007年6月下旬号
13. 2007年7月上旬号
14. 2007年7月下旬号
15. 2007年9月上旬号
16. 2007年9月下旬号
17. 2007年10月上旬号
18. 2007年10月下旬号
19. 2007年11月上旬号
20. 2007年11月下旬号
21. 2007年12月上旬号
22. 2007年12月下旬号
23. 2008年1月上旬号
24. 2008年1月下旬号
25. 2008年2月上旬号
バックナンバー

1. 2007年1月上旬号
2. 2007年1月下旬号
3. 2007年2月上旬号
4. 2007年2月下旬号
5. 2007年3月上旬号
6. 2007年3月下旬号
7. 2007年4月上旬号
8. 2007年4月下旬号
9. 2007年5月上旬号
10. 2007年5月下旬号
11. 2007年6月上旬号
12. 2007年6月下旬号
13. 2007年7月上旬号
14. 2007年7月下旬号
15. 2007年9月上旬号
16. 2007年9月下旬号
17. 2007年10月上旬号
18. 2007年10月下旬号
19. 2007年11月上旬号
20. 2007年11月下旬号
21. 2007年12月上旬号
22. 2007年12月下旬号
23. 2008年1月上旬号
24. 2008年1月下旬号

 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳をとりあげ、 文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアル ド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページ程の短いものが中心だから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に市販訳との優劣を競って みてはいかがだろうか。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げ ます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)

** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)

愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
Neck  「首」
ストーリー
タートン卿の屋敷に出かけたコラムニストの私。令夫人ナタリアはいけ好かないが、卿とは気が合った。二人して広大な庭園を散歩するうち、彼方にハドック少 佐とじゃれ合う令夫人の姿が目に入った。あろうことか接吻まで交わしている。そのうちふざけて野外彫刻に突っ込んだ令夫人の首が抜けなくなった。斧と鋸を 執事に持って来させた卿は、斧をふりかざそうとするが、ふとその手を休め鋸に替えた。恐怖が安堵に変わる令夫人の表情を尻目に、ニヤッと微笑みを見せる卿 の顔を私は見逃さなかった。


(原文p565) 中間話法
WHEN, ABOUT EIGHT years ago, old Sir William Turton died and his son Basil inherited The Turton Press (as well as the title), I can remember how they started laying bets around Fleet Street as to how long it would be before some nice young woman managed to persuade the little fellow that she must look after him.
(訳文p247)
八年ほどまえ、老ウ イリアム・タートン卿が亡くなって、息子のベイシル・タートンがそのサーの称号とともに《ザ・タートン・プレス》紙を引き継いだころは、“どこかのべっぴ んに、あなたのお世話をさせなくては”と、あのちび助の奴をうまくまるめこむまでに、いったい、どのくらいかかるだろうかというんで、フリート街の連中 は、ずいぶんとそんな賭をしたもんだ。

(コメント)

何回読んでも意味が取れない のは、誰が誰に言った台詞か分からないからだ。
theyは業界雀、Fleet Street は当時有名な新聞街、it は時間、persuadethat は「人を説得して…させる」、the little fellow はベイシル・タートン、shesome nice young woman

直訳:わたしは思い出す、人々がフリート街辺りで次のようなことに賭けをし始めた事の次第を。つまり、どこかの素敵な若い女性が努力の末、この結構な奴に 「私こそが貴方のの面倒を見なければならないのよ」と説得し終えるまでにどれくらいの時間がかかるだろうかについて。
修正訳:
私は思い出す、この仕合せ者を籠絡して「この娘に自分の面倒を任せよう」という気にさせる女がいつ出てくるか、フリート街で賭けがなされたのを。
(原文p545) 言い換え
That is to say, him and his money.
(訳文p247)
私は、そのことをよ く覚えている。こんなところが、彼や、彼の財産に対する、まあ反応だったんだ

(コメント)

上から引き続く文。that is to say はイディオムで「すなわち」だが、細かく言えばここの that は前文の she must look after him を指す。

直訳:世話をするというのはすなわち、彼と彼の金である。
修正訳: 面倒をみる、のはもちろん彼自身かつ彼の財産のことになる。
(原文p545)代名詞
Naturally, the vultures started gathering at once, and I believe that not only Fleet Street but very nearly the whole of the city was looking on eagerly as they scrambled for the body.
(p181)
で、当然、禿鷹ども がすぐさま集まってきはじめ、私の信じているところでは、フリート街ばかりじゃなく、ロンドン市のほとんどの連中が、その死体を奪いとろうと、ギョロギョ ロ、眼をひからせだしたのだ。

(コメント)

the body を奪いあうのは the vultures たる女たち。look on 見物するのは業界雀とロンドン子。

直訳:私が思うに、フリート街だけでなく殆んどロンドン中の人々が、禿鷹たちが死体を奪い合 う時熱心に見物していた。
修正訳:
フリート街のみならず全ロンドンが、禿鷹が死体に群がる様を高見の見物と決め込んだ。
(原文p545) 名詞
This was a mistake because precisely at that moment a dazzling creature called Natalia something or other, whom nobody had heard of before, swept in from the Continent, took Sir Basil firmly …
(訳文p248)
というのは、ちょう どそのあいだに、以前には誰も耳にしたこともない、ナタリアとかなんとか言う、目もくらむばかりの創造物が大陸から風のようにやって来たかと思うと、…

(コメント)

この creature は「女 性」の意。でも元のままでも大げさな感じでいいか…
 
修正訳:
美女
(原文p546) 名詞
By now, as you must have guessed, she was not only running the whole of The Turton Press, but as a result had become a considerable political force in the country.
(原文p546)
さて、もうお気づき のことと思うが、彼女は《ザ・タートン・プレス》を牛耳っているばかりじゃなく、その結果として、この地方の重要な政治力もにぎっていた。

(コメント)

he country は@国 A田舎 B地方 の三義あり。タートン・プレスはロンドンにある有力紙のようだ。ここは文脈から@。

修正訳:
この国
(原文p548) 副詞(形容詞ともとれる)
The pier of the balustrades were surmounted by stone obelisks ― the Italian influence on the Tudor mind ― and a flight of steps at least a hundred feet wide led up to the house.
(訳文p254)
欄干のあいだの壁 は、石の方尖塔―チューダ風の、イタリアの影響のある―をのせ、階段のつらなりは、さあ、すくなくとも家まで百フィートの長さはあった

(コメント)

百フィートといったら30 メール以上になる。随分長い玄関階段だが。
wide は副詞で「幅が…の」

直訳:少なくとも幅百フィートの階段の連なりが館にまで至っていた
修正訳:
玄関まで百フィート幅の階段が続いていた。
(原文p550) 数詞
…all that he would ask was that instead of a tip I should give him thirty-three and a third per cent of my winnings at cards over the week-end.
(訳文p258)
手前のお願いと申し ますのは、チップのかわりといたしまして、あなたさまが週末にトランプでお勝ちになった総額の九十九パーセントを、手前にいただかしていただきたいという ことなんで。

(コメント)

いくら何でも勝ち分の99% の分け前にあずかろうという協力者はいまい。

直訳:33と3分の1パーセント
修正訳:
三分の一
(原文p553) ** 名詞、** 指示語
In any event Jelks was a nuisance all evening; and so was Lady Turton who was
constantly called to the phone on newspaper business.

(訳文p265)
とにかく、ジューク は、一晩中ずっと不機嫌だった。そして、タートン卿夫人も、新聞関係の仕事で、しょっちゅう電話に呼びだされるので、不機嫌そうだった

(コメント)

不可算名詞の可算名詞化で 「わずらわしい人物」。so は…もそうです、の意味で a nuisance too

修正訳: ジュークがわずらわしかった。タートン卿夫人も…私のいらいらを募らせた。
(原文p556) 名詞
Once she put her arms around one of the protruding wooden limbs and hugged it, and another time she climbed up and sat side-saddle on the thing, holding imaginary reins in her hands.
(訳文p270)
一度は、つき出てい る木の手脚の一つに彼女は手をまわし、それを抱きしめてみた。もう一度は、その上にのぼって、横座りにすわり、ふりしきる空想の雨を両手にうけとめるしぐ さをした。

(コメント)

ご愛嬌。reinrain を間違えたか。想像のし過ぎ。訳稿を読み直して気付くべきだった。

修正訳:
架空の手綱をあやつる
*訳文の瑕疵もひどいが、編集者は何をして いるのだろう*


Copyright (C) 2006 ID Corporation. All Rights Reserved