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第78 回 (2013年11月号)
Poison「毒」Roald Dahl


早川文庫『あなたに似た人』所載 田口俊樹 訳

by 柴田耕太郎


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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文 法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳をとりあげ、 文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアル ド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページ程の短いものが中心だから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に市販訳との優劣を競って みてはいかがだろうか。
 冒頭に誤りの種別と誤訳度を示したうえ、原文と邦訳、誤訳箇所を掲げ ます。どう間違っているのか見当をつけてから、解説を読んでください。パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)

** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)

愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
Poison「毒」
ストーリー
イ ンド、ベンガルにて。私が夜おそく、仮寓しているバンガローに戻ると、相棒のハリーが部屋の灯りをつけたままベッドで身動き一つしないでいる。毒蛇がシー ツの折り返し部分に入り込んだままなのだという。私はインド医師ガンデルバイを呼んだ。医師は考えた末、クルロフォルムをシーツの間に充満させることにし た。精密で緊迫する作業。安全だと思われる15分後、シーツを用心深く剥がしたが、毒蛇はいない。安心するやら呆れるやら・・・

(原文p532―訳文p214) 指示形容詞
I couldn’t understand about talking off the shoes but I figured that if he was as ill as he sounded I’d better humour him, …

どうして靴をぬぐのか、私にはさっぱりわからなかった。でも、ハリイがあんな声を出すくらいの病気なんだったら、あいつの言うとおりにしてやった方がよさそうだ、こう、私も考えた。

(コメント)

筆者など、いつも具合が悪いが病気ではない(怠け病、と言われることもあるが・・・)。英語のillは(1)病気 (2)具合が悪い、の二義ある。ここは(2)のほう。

修正訳:
具合が悪いのなら
(原文p533―訳文p214) 名詞
‘See it, it’s still there. It went under that. I could feel it through my pyjamas, moving on my stomach. …’

見ろよ、ヤツはまだそこにいるんだ。ヤツはシーツの下をはっていった。ヤツがのあたりをうごめいているのが、パジャマを通して、おれにもわかったんだ。

(コメント)

ご愛嬌、校正ミスだろう。

修正訳:
(原文p538―訳文p226) 名詞
Ganberbai came out of Harry’s room and met me in the hall.

ガンデルバイは、ハリイの部屋から出てくると、ホールで私に会った

(コメント)

間違いではないが、訳語がゆるい。

修正訳:
を出迎えた
(原文p538―訳文p226)  副詞句
He began to pull a little piece of sheet out from under the mattress. He was working directly in line with Harry’s stomach, about eighteen inches from it, and I watched his fingers as they tugged gently at the edge of the sheet. He worked so slowly it was almost impossible to discern any movement either in his fingers or in the sheet that was being pulled.

彼はシーツのはしきれを、マットレスの下から抽きだして、ハリイのオナカと一直線になるように、そこから十八インチほどのところまで動かした。私は、シーツの端をソロソロひっぱる指の動きを見まもっていた。医者は用心深く、ソッとひっぱった。ひっぱっている彼の指も、シーツも、その動きが目に見えるのは、ほとんど不可能といってもいいくらいだった。

(コメント)

意味が分からない訳文。18インチ=50センチほど。はしきれを引っ張り出して、それとマットレスの間にチューブをはさんでゆくのだ。
作業した⇒ハリーの胃部と直線距離で(胃部から真直ぐたどったベッドの脇ということ)⇒18インチのところで、と読む。毒蛇がいるのでこわごわ仕事をしている描写。

修正訳:
・・・抽きだした。そしてハリーの胃の位置からまっすぐ18インチ離れたところで作業した。・・・
(原文p538―訳文p227) 前置詞
I do not know how long it took him to slide that tube in a few inches.

「その二、三インチのチューブをくぐらせるのに、いったい、医師がどのくらい時間をかけたのか、私にも見当がつかない。

(コメント)

チューブが2、3インチなのではない。inは単位「…分」をあらわす。

修正訳: 二、三インチ分
(原文p540―訳文p230) 慣用句
The whole of Harry’s chest was visible now, or rather the striped pyjama top which covered it, and then I saw the white cord of his pyjama trousers, neatly tied in a bow.
A little farther and I saw a button, a mother-of-pearl button, and that was something I had never had on my pyjamas, a fly button, let alone a mother-of-pearl one. This Harry, I thought, he is very refined.

とうとう、ハリイの胸は全部あらわになった。正確に言うなら、彼の胸をおおっている縞のパジャマが先にだ。それから、キチンと蝶結びになっているパジャマのパンツの紐が見えた。やがて、ボタンが、真珠母貝のボタンが見えてきた。そのつぎにあらわれたものは、真珠母貝のボタンはさておき、私のパジャマにはついぞつけたことのないもの、フライ・ボタンだ。このハリイって奴は、と私は思った。とんだお上品な男なんだな。

(コメント)

and thatthat はふつう前のものを指すが、ここでは強調で語順が転倒し、後の a fly button を指している。let alone は「…どころか(―ない)」。
直訳:そしてそれは私が今まで決して私のパジャマに付けたことのないものであった、フライ・ボタンなんて、真珠母貝ボタンは言うに及ばず。

修正訳:私は真珠母貝ボタンどころか前ボタンだってパジャマに付けてはいない。


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