(p132—p261) その二日間におこなわれたことはほぼそれだけだったし、それ以外のことをする時間はなかった。
That was about all there was or all there was time for.
(コメント)*
下線部を一文にすれば There was time for all. この all は前文で述べられた戦さ騒ぎのこと。time は不可算名詞で、時の流れ。直訳すれば「(そうしたこと)すべてのために時の流れは存在した」。or の前の節と同じことを強調的に言っている。元訳だと「時間の余裕」が示され、少しずれるのではないか。
修正訳:時間はそのためにだけ流れていた
(p135—p262) テントの垂れ幕を通して雨を眺めているうちに、わたしは山々がわれわれの敵にまわっていたことをはっきりと知った。胃袋がそれを感じたのだ。
And as I stood there looking at the rain through the tent flap, I knew for certain that the mountains had turned against us. I could feel it in my stomach.
(p137—p263) われわれが少女を囲んでパラシュートをはずし、少女が帰らない飛行機のことを質問しようとしたとき、だれかが叫んだ。「おい、敵機だ!」
We were standing around taking off our parachutes and she was trying to ask us about it, when suddenly someone said, 'Look out. Here they come.'
(コメント)*
前後の流れからこう訳したのだろうが、stand around は、何となく辺りに立っていること。
修正訳:
そのままの位置でパラシュートをはずし
(p142—p266) われわれはカティーナのために用意しておいたテントを見せ、フィンが前の晩アテネでなにやら謎めいた手段で手に入れた小さな木綿のパジャマを見せた。
We showed her the tent which we had prepared for her and we showed her the small cotton nightdress which Fin had obtained in some mysterious way the night before in Athens.
(p146—p268) それから北に向って雄大なテルモピレー峠へ飛んだが、海に向かってゆっくりと南進する長い車両の列が眼下に見えた。
Then we flew up the great Thermopylae Pass and I saw long lines of vehicles moving slowly southwards towards the sea.
(コメント)**
この great は、歴史に名高いの意。レオニダス率いるスパルタ軍が、ペルシャ軍の侵攻を阻止した峠。
修正訳:
かの名高いテレモピレー峠
(p147—p269) それは復讐の権化と化した暴徒であり、彼らを非難する気にはなれなかったが、ほかにも考慮しなければならないことがあった。
It was a mob intent upon vengeance and one could not blame them; but there were other considerations.
(コメント)*
ちょっと意味がずれる。この consideration は可算名詞で、考えねばならないこと⇒配慮すべき点。
例:The friendship of the members is a major consideration in the party.
(会員間の親睦を深めることがそのパーティーの主旨です)
修正訳:
こちらにもやらねばならぬことがあった。
(p151—p271) 彼の死体はどこか荒涼とした山腹で、飛行機の残骸にはさまれているのだろうか、それとも海の底に沈んでいるのだろうか。いずれにしても手厚く葬ってやりたかったのにと、そればかりが気になった。
I wondered whether his body lay tangled in the wreckage of his aircraft on the side of some bleak mountain or whether it was at the bottom of the sea, and I hoped only that he had had a decent funeral.
(コメント)*
意訳しているのだろうが少しずれる。直訳すれば「彼がきちんとした終焉を迎え得た事だけを願った」。散り際が立派であること、勇士にふさわしい死に方。異常な苦しみを味わったり、惨めな遺体の状態にないこと。それが a decent funeral の中味だろう。
修正訳:
勇士にふさわしい最後であったことだけを願った