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第61回 (3月号)
『外科医』 The Surgeon
by 柴田耕太郎
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 文法力をつけたいが、無味乾燥な文法書など読みたくない。
 そんな読者のために、人気小説の翻訳書に見る誤訳・悪訳を取り上げ、文法面から解説してゆく。題材は最近映画化された『チョコレート工場』の原作者で、日本がロケ地になった映画『007は二度死ぬ』の脚本家でもあるロアルド・ダール(Roald Dahl)の短編から任意に選ぶ。いずれも原文で10ページに満たない短いものだから、読者も自分で訳してみて、この解説を参考に、市販訳との優劣を競ってみてはいかがだろうか。
 パズルを解く気分で、楽しみながら英文法を学びましょう。
 今回取り上げるのは、『王女マメーリア』(早川書房、田口俊樹訳)所載の『外科医』The Surgeon

(ストーリー)
  外科医のサンディはアラブの王子の命を助けたお礼に、立派なダイアモンドをもらう。冷蔵庫の製氷器に隠し外出して、戻ってみると、家は荒らされダイアは行方知れず。翌日、同僚の若い外科医ウイリアムがたまたま執刀した患者の小腸から宝石らしきものが出てきた。それをウイリアムは宝石商の鑑定に出すが、そこでひと騒動…。

誤訳度: *** 致命的誤訳(原文を台無しにする)
** 欠陥的誤訳(原文の理解を損なう)
愛嬌的誤訳(誤差で許される範囲)
『外科医』 The Surgeon
(原文p740) 誤訳度:**
‘I work entirely for the National Health Service and they pay me a very fair salary.’
(訳文p165)
「私は国家医療制度のもとで働いています。それに見合うだけの給料はちゃんともらってますから」

(解説)
確かに
the National Health Service は「国民健康保険制度」の意味があるが、ここは「公共医療施設」のこと。work for は「…で働く」。
例:
He works for a newspaper.(彼は新聞社に勤めている)
atin だと場所、for だと雇用関係に焦点があてられる。they は当局。
修正訳:
「私は公的医療機関の人間でして、それなりの報酬はもらっていますから」
(原文p740) 誤訳度:
When the call came through from Casualty for an emergency surgeon, Robert Sandy was up in his office having a cup of tea after a fairly arduous morning’s work which had included a gall-bladder, a prostate and a total colostomy, but for some reason he happened to be the only general surgeon available at that moment.
(訳文p166)
「救急治療室から緊急手術の呼び出しがかかったとき、ロバート・サンディは午前の仕事をようやく片づけ、自分のオフィスで紅茶を飲んでいるところだった。その日は胆嚢疾患の患者に前立腺疾患の患者に胆嚢全摘出の患者と続き、午前中いっぱい働きづめだったのだが、どういうわけか、救急治療室からの呼び出しがかかったとき、手があいている外科医は彼しかいなかったのである。」

(解説)
gall-bladder は「胆嚢」、 prostate は「前立腺」、colostomy は「人工肛門形成」「結腸切開」。
「胆嚢、前立腺、全結腸切開の手術と続き」ぐらいでどうか。
(原文p741)誤訳度:
The Ambassador then told Robert Sandy that his patient was none other than a prince of royal blood.
(訳文p167)
「それから大使はロバート・サンディに、彼の抱えている患者はなんとサウジアラビア王家の血を引く王子であると告げたのだ」

(解説)
王子なら王家の血を引くのが当たり前に思えるが…。
prince には(1)王統の王子 (2)高位の貴族 (3)中世の独立的諸侯 (4)小国の君主、の意味がある。ここは(1)であることを強調した表現。「血を引く」を省いてはどうか。
(原文p754)誤訳度:**
They weren’t even amateur thieves. They were simply hooligans off the street. Riff-raff. Yobbos. Probably three of them. People like this scout around looking for an empty house and when they find it they break in and the first thing they do is to hunt out the booze. Did you have much alcohol on the premises?
(訳文p195)
「といっても素人が泥棒にはいったのでもない。これはその辺の不良の仕業ですよ。そう、ごろつきどもの仕業です。チンピラどもの。押し入ったのはたぶん三人でしょう。この手の輩は留守の家を探して歩き、手頃な家が見つかると押し入って、まず酒を漁るんです。お宅にはアルコール類はたくさんありましたか?」

(解説)
何で「三人」と断定できるのか不思議(この文の前後に説明は出てこない)。
hooligans (ごろつき)、Riff-raff (くず)、Yobbos (チンピラ)、そのどれもに当てはまる連中、と言っているのではないか。
修正訳:
「くず、ごろつき、チンピラ。そういった手合いの仕業ですよ」
(原文p758)良訳度***
‘We might have expected a fishy story from a man with a name like Haddock,’ Goff said.
(訳文p201)
「ハドック(タラの意)なんて名前のやつが考えそうな出鱈目な話だな」とゴフは言った。

(解説)
なるほどね。私は人名の意味にまで頭が回らなかった。さすがプロの翻訳者、これは偉い。

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